午前9:30

ホームオフィスを見回して、ジョンは毎日の通勤で疲れていた頃のことを思い出した。情報通信技術とコンピュータの発展で、カナダの本社から3000マイル以上も離れた自宅で仕事ができるようになったことに感謝している。

また、この20年間でいかにこの小さなオフィスが変わったことか。

なじみ深いタイプライターに代わって、今はワードプロセッサーやファイル保管場所にもなるコンピュータとモニターがある。何本もの回線ももう古い。

電話、データ送受信機、ビデオカメラなどは組み合わされて一つになっている。厖大なファイリングキャビネットの代わりに、ほんの2つ3つの小さなキャビネットとコンピュータ・ディスクファイルがあるだけである。

もう一つ大きな違いがある。音声合成で話す秘書代わりのハウスブレインがいることである。

「おはよう、ボス。今日は最初に何をしましょうか。」

「今朝は特に何もないよ。私は正午の電子会議まで、役員会議の資料やノートに目を通すことにする。その間は、君のセンサーやメッセージに緊急のものが入らない限り、特に仕事はないと思うよ。」


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