午前6:30

太陽がオーランドに上り始める頃、ザナドゥの複雑な分析的機能を担当するハウスブレインの左側部分は活気づき始めた。メモリーバンクをじっくり見ると、再帰的機能を担当するハウスブレインの右側部分が、夜の間うまく仕事をしてきたことがわかる。

すべてのシステムが適切に機能している。しかし、ハウスブレインはあらかじめプログラムされたチェックを休むことなく続けている。

配管システムの水圧レベル:
早春の温度低下時における太陽熱ヒートシンクの適切な熱予約:
温室の水耕栽培ガーデンの湿度と栄養状態:
すべての電気回路の状態:
すべての窓とドアは締められているか:
構造的な欠点が出ていないか:
緊急のメッセージは受信しなかったか:
これら全ては瞬時に行われる。

そしてセンサーからの情報で何か支障があることがわかれば、ハウスブレインが呼び起こされ、彼自身で処理できるものなのか、主人を起こす必要があるものなのかを判断する。

さて、最も重要な役割、それは全ての居住者とその健康状態のチェックである。ハウスブレインは、それぞれのベッドのセンサーを通して、体温、筋肉の緊張状態、脈拍などを測定することができる。

夫人はぐっすり眠っており、全ての機能は正常である。息子はいつものようにそろそろ目を覚ましそうな気配であるが、何もかもが正常である。主人は少し落ちつきがないように見えるが、今日予定されている役員会の電子会議のためであろう。

次にハウスブレインは外部へ目を向ける。外のセンサーを使って、温度、湿度、気圧を測定し、嵐や急激な気象変化の可能性を検出するために、メモリーバンクとの照合を行った。

今日は比較的涼しく乾いているので、ハウスブレインは快適な湿度にするため加湿器を動かしながら、空気の入れ換えのために換気ダクトと窓を開けた。

ビデオシステムは、『不動産』、『証券市場』、『会社名』など、主人と夫人があらかじめ設定しておいたキーワードをもとに情報検索を行って、目覚めた時にすぐに見られるようにしている。

今朝は特に与えられた仕事もないし、取り立てて問題も出ていないので、ハウスブレインはスタンバイ・モードになり、次の毎日の仕事、すなわち家族を起こす時間まで待つことにした。


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