A.木造住宅と現場管理 08.木造住宅の構造安全性  SAREX 住環境価値向上事業協同組合(C)2012

(A081)
耐力壁の倍率ってどうやって決めているのですか?

耐力壁の倍率は、耐力壁の強さを数値で表したものです。壁倍率1とは、壁長さ1mにつき、地震や風などによって建物に掛かる水平力を200kgf(1.96kN)負担できることを表しています。一般的な構造用合板は1.5倍、90o×45oの筋かいは2倍です。両者を足し合わせて3.5倍とすることも出来ますが、足し合わせによって5倍を超えた場合でも、壁量計算上の上限は5倍までです。(例:構造用合板2.5倍+90o×45oの筋かいたすき掛け4.0倍=6.5倍⇒5.0倍として計算)

(A082)
構造計算と壁量計算は何が違うのですか?

壁量計算は、地震や風などによって建物に掛かる水平力に対して、建物の構造が安全であるように、耐力壁の量やバランスを簡易的な計算で確かめる方法です。一方、構造計算は、一般的な木造住宅であれば、許容応力度計算で建物自体の荷重や積雪荷重、積載荷重などの鉛直力に対して柱・梁などの構造耐力上主要な部分が安全であるか、地震や風などによって建物に掛かる水平力に対しても建物が安全であるかを確かめます。つまり、壁量計算は水平力に対する検討を簡易に行い、構造計算は水平力及び鉛直力に対する検討を行う点に違いがあります。

(A083)
「風圧力に対する必要壁量」を行う際、なぜ各階床+1.35m以下の部分を見付面積から除くのですか?

風圧力に対する壁量計算においては、各階の階高を標準的な2.7mと仮定し、その下半分に加わる風圧力は、その階の床を経由して下階の壁が負担するものとして計算するためです。したがって、2階床面から+1.35m以下の部分の風圧力は1階の耐力壁が負担し、1階床面から+1.35m以下の部分の風圧力は基礎が負担するものとして計算します。

(A084)
壁倍率が5倍を越える場合のN値計算の取り扱いは、壁量計算と一緒ですか?

壁量計算においては、例えば、「構造用合板2.5倍+90o×45oの筋かいたすき掛け4.0倍=6.5倍」であっても「5.0倍」として計算します。耐力壁は、倍率に応じた接合部耐力が求められるため、あまりにも倍率が大きいと、接合部が先に破壊し、十分に性能を発揮できない場合があります。したがって、壁量計算においては、倍率を5倍までとしていますが、N値計算においては、実態的に「6.5倍」の耐力壁である場合は、性能を発揮できるように、接合部の耐力を算定したほうが安全側と言えます。