Self-build House
セルフビルド・ハウス



少ない費用で自らの住宅を入手する方法として、セルフビルド住宅がある。イギリスでは1970年後半からセルフビルドが盛んに行われている。

100m2程度の2階建て住宅が600万円程度になっており、セルフビルドでは一般の住宅建設コストの約半分で住宅を手に入れることができる。



日本のセルフビルドと大きく違うのは、まず一人ではなくグループで行うことである。グループを結成し敷地を探し、メンバーで一緒に住宅を建設する。



一人であるいは一家族だけで1年半といった長期にわたってセルフビルドで住宅を建設するには、かなりの忍耐力が必要であるが、グループの場合たとえやる気が無くなったときでも、他人の頑張っている姿を見ることによって、再びやる気を出すことができる。

さらにこうしたグループを支援する会社、トレーニングや現場管理をするサービス、セルフビルドを専門にしたローンサービスを行う会社、設計コンサルを行う設計事務所などがあることである。



このようにイギリスのセルフビルドは、極めて組織的に確立されたもので、住宅そのものも建築許可を受けている。はたして日本でセルフビルドを行った場合、公庫や銀行などの融資を受けることができるのだろうか。

多くのセルフビルダーのグループでは、全てのメンバーが、男性だけでなく女性も子供達まで住宅建設作業を手伝っている。こうした作業を通じて、互いにわからなかったメンバーの意外な隠された能力に感心することがしばしばある。



人によっても違うが夕方(とはいっても夏のイギリスは10時頃まで明るいので、仕事が終わった後に作業するにも十分な時間がある。)や週末が彼らの作業時間となっている。



セルフビルダーにとって自信のない部分は、サブコンを雇うことができるが、敷地の排水管の施工まで含めほとんどの作業をセルフビルドで行ってしまう。

しかし通常セルフビルド構法の設計者であるシーガルの主張に基づいて少なくとも1職種だけは、サブコンに依頼している。彼は屋根の防水を確実にするために、防水工事は専門職に任せるべきであると考えた。



また彼らは月に何日作業しなければならないといった取り決めはないし、予定した日にこなかったからといって、罰金を課せられることもない。それぞれの家族は、自分自身の家を作ることに責任があり、他人とは関係なく自分自身のペースで作業を進めることができる。しかし排水管の施工や、構造部材の建て方、重量物の運搬などは一緒に作業を行うこともある。

とはいってもセルフビルダー同志は、建設作業の間中、自由にアイデアを交換したり、互いの工具を貸し借りしたり、難しい作業を手伝ったりして、結構共同作業を行っているといった連帯感を感じることができる。実際多くの現場で自発的に他人の作業を手伝っている光景を見ることができる。



ウォルター・シーガルによるセルフビルド住宅構法は、木造軸組によるものでその建て方作業には、ほとんど専門技能を必要としない。

ジョイントも相欠き程度の単純なもので、のこぎりとドリルを使うだけで組み立てることができる。しかし多様性を確保するため軸組材料はプレカットされていないので、正確な寸法取りと直角を出すことは必要である。

基礎はコンクリート製の60cm×60cm、深さ100cm程の角柱の独立基礎を用いており、柱はこの基礎の上に乗せられているだけで、特に緊結固定はされていない。

柱は50mm×175mmで、その両側を50mm×200mmの2本の梁で挟んでボルト締で留めている。梁の上に50mm×150mmの桁(ジョイスト)を600mm間隔で並べ金物て桁相互および直交する桁を留めている。基本的にはここまではただ材を正確に切るだけである。筋かいは柱にボルト留めであるが、相互は相欠きでギャグネイルで留めている。筋かいの施工にはやや技能が必要である。

外壁はまず内側にプラスターボードが張られ、その外側に木毛繊維板が張られ、さらにスペーサーを打ち通気層を設け、外部仕上げとしてグラサル(化粧特殊セメント板)が張られ、ジョイナーの木材が目地の部分にボルト締めされる。

手間はかかるが乾式工法なのでそれほどの技能は必要とされない。



床は天井仕上げとしてプラスターボードを桁(ジョイスト)に押し縁材を使って留める。最下階の場合さらにその上に断熱材として発泡スチロールを乗せる。

さらに桁の上にフローリング材を敷き詰め床ができあがる。

屋根の場合、フローリングの代わりにデッキ材が張られ、その上にシート防水が行われる。防水押えとして土が盛られ芝生の種が蒔かれる。1カ月もすると芝生が生えて数センチにもなり茶色だった屋根が緑に変わる。

間仕切壁は桁の間隔と同様600mmモジュールで、50mmの木毛繊維板の両面にプラスターボードが張られ、水回りなどではさらにその上にグラサルが張られる。

600mmのボードの目地は幅100mmの小割板の当て木が木ネジ締めされる。

インテリアとしてはちょうど600mm間隔に化粧柱が出てくることになる。この当て木にはコンセントやスイッチの取付も可能である。


Last modified: Fri January 9 17:55:00 JST 1998
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

ホームページに戻る。