ROSMALEN

ロスマーレンの未来住宅


オランダのデンボッシュのロスマーレンに建設されたこの未来住宅は、1989年6月20日にオープンした。建築や生活の新たなアイデアを触発させるといった狙いで、7年間の実験が続けられる予定である。そしてここにはすでに100以上の新規開発製品が操作できる状態にある。

この未来住宅は、いくつかのテーマパークを運営している"Libema Vrijetijdsparken"と建設会社IntervamそしてChriet Titulaer Productionsが主体となって進められた。基本設計はアムステルダムの音楽劇場などの設計で有名な建築家Cees Damによって行われた。

この未来住宅は多くの企業の協力によって、短期間で完成させることができが、それで完了したわけではない。実験が続く7年間、更新によって変わり続けるはずである。個々のエレメントは、技術革新の増大を反映したさらに進んだものに置き換えられるに違いない。

参加に興味を持った企業の中で、多くの企業が未来のコンセプトづくりに多くの時間を費やした。その典型としてDe Blok Innovationと共同してして未来型キッチンを開発したAlmanovaがある。1989年春の専門ショーに2回にわたって展示され、それらをこの未来住宅のキッチンとしてまとめた。

住宅の南側の壁はすべてガラスで構成されており、幅2.5m高さ6.5mの4枚のガラスドアになっており、リモコンによって油圧で開閉することができる。

この大きなガラスドアを開けることによって、リビングは広大な空間を取り込むことができる。リビングの前面はカーブのついた壁に囲また庭があり、ガラスドアの開放によって半屋外空間として利用できる。

庭の半分は池になっており、さらにその池は庭の壁の外にまで広がっており、あたかも島の中に家が建っているような雰囲気を与えてくれる。

もう一つの注目すべき点は、バスルームの屋根である。ガラスでできておりボイスコントロールで開閉させることができる。朝日を浴びて太陽に挨拶しながら開く花といった光景である。

円柱型のバスルームはガラス・パネルで構成されている。このパネルは液晶シャッター・ガラスで、プライバシーを守ることが必要な時は、透明ガラスが曇りガラスに一瞬にして変わる。

以前ならばヌーディスト・ビーチでしか味えなかった、太陽のもとでのトップレスのリラックス感が、今では良心のとがめなく、実に簡単に楽しめるというわけである。

1階平面図

2階平面図

3階平面図


未来住宅のデザイン・イメージ


この未来的な住宅が来訪者に与える印象は、アルミとガラスによって決定づけられている。この未来住宅の関係者は別にこうした印象に対しあえて反論はしない。

未来の建物がこうした形態になるということより、いかに未来的雰囲気を演出するかに努力がはらわれた結果ということであろうか。

すべての壁のほとんど、シアターやショップやティールーム、「未来への橋」さえもガラスがたくさん使われている。この橋はシアターと未来住宅とをつなぐもので、デザイン的にも未来的なものを感じさせる。

未来住宅の屋根はコンポジット材で作られている。ガラスでない部分の壁は、やはり新材料と新技術で作られている。


リビング


正面に設置されたファイアープレイスは2m×5mで、水の中でガスを燃やし炎を出している。炎は水の中で燃やされている。地球の古くからの要素である火と水そして空気が、ここに示されている。

上部には3つのディスプレイが組み込まれている。南側の開口は幅2.5m高さ6.5mの4枚のガラスドアになっており、リモコンによって油圧で開閉することができる。このガラスドアを開けることによって、リビングは中庭と一体化される。


キッチン


ドライゾーンとウエットゾーンをL型に配置し、その中心部に回転式収納タワーを設けている。タワーには献立や調理方法を音声で指示してくれるコンピュータ・ディスプレイが組み込まれている。

アルミのシルバーは未来を感じさせるカラーになっている。キッチン脇の壁にはリサイクルを考慮して分別できるダストシュートがある。

この未来型キッチンは1960年代にGKグループなど多くのインダストリアルデザイナーが提案したキッチンのスタイルの再現といったところである。こうしたデザインは冷凍食品やレトルト食品を多用する、近未来のキッチンスタイルにもマッチしている。

単なる加熱だけならば部屋も汚さないし、調理時間も短く他の行為をしながらでもできるといったことで、ダイニングキッチンを超えて、リビングのまん中にキッチンを持ってくるといった例もアメリカに出てきている。


バスルーム


チューリップ型のガラスの屋根はボイスコントロールで開閉させることができる。バスタブはさまざまなモードを持っており、水や気泡を循環させてリラクシング・マッサージを行うことができる。

しかもセルフクリーニングで掃除の煩わしさはない。またメモリー付きのおしゃべり体重計も人気がある。


メインベッドルーム


寝室の壁は、液晶シャッターガラスで、プライバシーが必要かどうかで、不透明にしたり透明にしたりすることができる。

ベッドヘッドの照明は移動式で使いやすい。これはすぐにでも応用できそうである。日本で商品化するならばさらに液晶のテレビもつけるのがよいだろう。回転式のワードローブも備えられている。回転ならば電動化も容易である。


子ども室


 天井の照明は光ファイバーが接続されている。コーナーにはパーソナルコンピュータが設置されている。キーボードは引出し式で使わない時、デスクの中に格納される。

1980年代はじめホームコンピュータといったコンセプトの商品開発が行われていた頃は、さまざまなこうしたデスクも考え出されたが、最近では見かけなくなってしまった。ハイテク電子書斎の家具として再検討してもよさそうである。

デスクの上の照明はランプロボットと呼ばれ音声の命令で角度や明るさを変えることができる。これをあえてロボットと呼ぶのは、ミサワホームのホームロボットと共通するところがある。


設備機器と電子技術


ホームバスシステムが敷設され、火災や防犯などのセキュリティーなどの働きを担っている。

設計チームはこうした機能を、住宅のブレイン(頭脳)とでも表現できる一つのシステムに統合することを狙っている。彼らはこうした分野をヨーロッパで進めているユーレカプロジェクトともコンタクトをとって開発を進めた。

CD−IやCD−Video、レーザービジョンなども設置されている。また小さな寝室にはフロッピーディスクを使ったスチル・ビデオカメラが設置されている。

この未来住宅のインテリジェント化に関しては、まずリモートコントロール機器を使いやすくなることであった。こうしたことによってシャワーを浴びたりお風呂に入ったりしながらでも、コーヒーを沸かすことができる。そして同様にカーテンを開けたり閉めたりもすることができる。

また新しいマンマシン・コミュニケーションの方法も利用している。バスルームのガラス屋根はボイスコントロールで開閉制御されていというように、新しいコミュニケーションの方法も利用されている。

音声合成チップはキッチンでも使われている。メニューがスクリーンに映し出されるが、音声はこのチップによって出される。親しみを持たせるために住宅のあちらこちらで、来訪者に音声合成により情報を提供している。

エネルギー設備として、3つの設備が導入されている。(1)太陽電池は、非常用電源として、(2)太陽熱温水器はバスルームの給湯として、(3)エネルギー電池も設置されているが、21世紀には個々の家庭の電力供給源として使えるようになるはずである。

キッチンに設置されたメディアユニットは、ガスや電力や水道の使用量を表示している。これらのデータはガス会社などそれぞれの企業からオーソライズされたものである。

メディアユニットは、通信、エネルギー、インテリジェンスなどの関連性を強調している。この実験を通して、こうした開発がこれからさらに必要なのか、不要なのかの議論の起爆材になるのではないかと期待されている。

もちろん未来住宅の屋上には、衛星受信アンテナが設置されている。60cmのパラボラでいくつかの衛星放送を受信することが可能である。いっぽう新しい通信基準であるISDNにも適合している。

住宅のあちこちにデータ通信や電話サービスを統合化するための情報コンセントが設置されている。そしてこのネットワークは広げることができる。

もちろん住宅の頭脳(ブレイン)もこのネットワークに接続されている。床の中に敷設する特別なケーブルが開発され、これはISDNの標準に適合するものである。また部分的に光ファイバーも敷設され実験されている。

PTT Telecom(電電公社)はこの未来住宅のために実際に操作できるビデオホンのモデルを開発し、リビングルームとオフィスルームを結んでいる。開発チームはこうしたすべてのサービスを統合化して一つの端末機器しようと考えている。


Last modified: Sat May 4 11:41:00 JST 1996
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

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