NEXT 21
大阪ガス実験集合住宅


1993年建設されたNEXT21は、都市での生活を魅力あるもにするために、新しい概念、新しい技術で今後の集合住宅を考えるための実験住宅である。

「環境保全」、「省エネルギー」、「ゆとりある生活」といったこれからの集合住宅に求められる課題に対応するため、ここでは多くの技術開発が行われている。その課題をさらにブレークダウンし次の6つにまとめている。

(1) 自然と共生した住まいに暮らしたい。
(2) 環境にもやさしい、そんな豊かさを考えたい。
(3) 限りある資源をもっと有効に活用したい。
(4) 自分が満足できる家に住みたい。
(5) コミュニティーを大切にしたい。
(6) もっと快適に暮らしたい。


環境保全


これからの都市の集合住宅を考える場合、地球および都市環境への配慮は欠かせない。例えば緑の問題一つでも、人間のためのグリーンだけでなく、野鳥など生き物にも価値あるものにする必要がある。

環境の創生にまで踏み込んだ立場でエコロジーを研究しながら開発を進めている。その具体例がエコロジカル・ガーデンである。

1階に設けた流れる水路と小さな池を持った環境緑地、2階から6階まで花の回廊とでもいうべき緑化テラス、さらに屋上には太陽の恵みを活かした環境緑地が設けられている。

こうした緑地は周辺の他の緑地と連携し、都市の自然環境の一部を担うと同時に、住まい手に心のやすらぎを与えてくれるばかりでなく、日射の遮蔽効果や水分蒸発による潜熱除去など省エネルギーにも役立つことが期待されている。


さらに生ゴミや生活排水については環境への負担を減らす、クローズドシステムが考えられている。


生ゴミ破砕搬送システム

ディスポーザーのような破砕圧送装置により、地下1階に設けられた調整槽に各住戸から生ゴミは搬送される。


アクアループシステム

生ゴミは生活排水の生物処理で生成される汚泥とともに、触媒を用いたアクアループシステムにより炭酸ガス、水などに酸化分解される。このプロセスで生成される熱は給湯予熱としても利用されている。


生活排水処理システム

台所、風呂、トイレの排水は生物処理の接触ばっ気法により処理される。


中水処理システム

生物処理された水の一部とアクアループシステムの処理水は活性炭などにより中水処理されトイレの洗浄水などとして再利用される。


省エネルギー


文明が高度化するほど、1人当たりのエネルギー消費量は増大するが、資源エネルギーには限りがある。資源とエネルギーを高効率に活用することで、消費量を増大させずに快適な生活を実現しようとした。

NEXT21では給湯から空調まで、生活に必要なエネルギーをトータルに考え、従来の方式に比べ1次エネルギー換算で約30%の省エネルギーを目標としている。

こうした目標を実現するためNEXT21では次の5つの技術が使われている。

(1) 燃料電池を導入し高効率なコージェネレーションシステムを実現。
(2) 燃料電池やごみ処理などの排熱の有効利用。
(3) 太陽電池など自然エネルギーの活用。
(4) 直流配電システムによる効率的な電力の供給。
(5) 負荷予測制御手法により、システム効率を最大限に向上。

燃料電池、太陽電池など独立型電源システムで生じる電気は直流で、これをインバーターを使って交流変換するとロスが生じてくる。

そこで共用照明やエレベータなど直流で使えるものには、直接直流を入力して効率を向上させている。


ゆとりある生活


都市生活の利便性や、現代生活が持つ快適性、こうしたニーズはこれからも変わることはない。自分や家族のよりよい生活、毎日の充足感といったものを、より高いレベルで満足させるためには、住まいもまた変化したり高機能化したりするといった発想からの技術アプローチが必要である。

ゆとりある生活を実現するために、ここでは「システムズ・ビルディング」、「二段階供給方式」、「フレキシブル配管システム」、「立体街路」、「キッチン・バスシステム」を提案している。


システムズ・ビルディング

躯体システム、外壁、開口部などを耐用年数や生産流通の違いから4つの部位に分け、これらの調整ならびにシステム化、モジュラーコーディネーションを行い高度なフレキシビリティーを持つシステムズ・ビルディングの開発を行っている。


二段階供給方式

耐用年数が長く公共性の高い、柱・梁・床と相対的に耐用年数が短く私的な部分である内装、住宅設備機器とを二段階に分けて計画、建設、供給を進めるものである。

これにより都市景観や建築物の社会的価値を担保しつつ、住まい手のニーズを反映させることができるようになる。


フレキシブル配管システム

これまで集合住宅では、水回り設備の設置はパイプ゚シャフトのまわりに限定されており、設計の自由度を制限してきている。

NEXT21では階高を3.6mとすることにより、床下および天井裏に配管スペースを確保し、躯体とは別に敷設し、更新しやすくすると同時に、どんな場所でも水回りの配置ができるようになっている。


立体街路

各住戸へのアプローチ、歩く道筋を画一化せずに、巡回できるような立体街路を設けることによって、伝統的な街家がもっているような、自宅周辺の界隈性といったヒューマンな要素を復活させようとした。

廊下、階段を街路として位置づけて、通行といった機能だけでなく、かっての街が持っていたような路地裏空間のようなものが持つ、ゆとりあるふれあいのスペースを持たせようとしている。


キッチン・バスシステム

生活の変化に合わせて、キッチンも変化できることが求められている。さらに調理の本格化といった要求と合わせ、その一方でコンピュータなどにサポートされたより簡易化、省力化も求められている。

コント・レンジを沿革コントロールし、リビングルームなどでテレビのモニターを見ながら調理の管理・進行ができるようなリモコン調理システムを開発し、将来的な省力化の可能性を実験している。

またリフレッシュ空間としてのバスルームには、画一的でなく住まい手のニーズを反映した浴室が必要とされている。

浴槽自動洗浄システム、大型浴室AVシステムなど自由に組み込めるシステムバスの開発が行われている。


3階平面図


Last modified: Sun May 5 18:12:00 JST 1996
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

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