Innovative Building System Project
IBSプロジェクト


アイントホーヘンの駅から徒歩数分の所に、アイントホーヘン工業大学がある。建築生産の工業化に取り組んできているJon Westra教授を訪ねた。

折板鋼板とメカニカル接合による革新的建築システム(Innovative Building System)の実験住宅は、大学構内の立体トラスドームの中にある。

構造や施工の途中段階を見せるために、あえてドームの中に建設したわけである。


個別性と大量生産とを結びつけたIBSプロジェクト


住宅やオフィスビルといった建物にとって効率は重要な役割を果たしている。物としての建物の効率は投資回収効率を意味しており、いっぽうその働きでの効率のよさは快適性を意味している。

まずは建物が高品質で、しかも丈夫であることが求められる。さらに社会の個別化により住宅が設計される際に柔軟性が要求されるようになってきている。

絶えず起こる入居者による変更への要求にも、簡単に対処できるようにしておかねばならない。こうした変更は前もって確実に予測することは難しいので、そう簡単な問題ではない。

この革新的な建築システム(IBS=Innovative Building System)は、こうしたフレキシビリティー実現のために適切な解決方法を提供しており、しかも限られた種類の建築部品で、産業面では大量生産を容易にし、設計面では大きな自由度を建築家に与えている。

アイントホーヘン工業大学(TUE)の建築学科の研究者は、建築生産工業化の問題に1980年から取り組んできている。1988年からはこうした成果をもとに企業との共同プロジェクトを開始し、緊密な協力により、大学構内に住宅のプロトタイプを建設している。

IBSの良さは、なによりも極めて単純なシステムであるということである。コスト面からは大量生産可能であること、デザイン面からは自由度を建築家に提供しなければならないといった矛盾する問題を解決することが、ずっと求められてきた。

こうした問題に対応するためにスチール・コンポーネントの高性能なパッケージが開発された。これにより建物に求められる、いかなる個別的な要求にも対応することができるようになった。


シンプルなシステムは生産性と自由度を生む


この構造システムは,新しいシステムでの重要部分である。壁と床エレメントなる薄肉スチール折板が用いられている。

台形の折板形状は構造的にも強度があるばかりでなく、ガス、給排水、電気など住宅のさまざまな配管、配線スペースとしても役立っている。

しかもメカニカルな接合方法で、こうした機能的なコンポーネントを組み合わせ、さまざまな建物を建てることができる。

必要なコンポーネントの数はごく限られたものになっており、折板パネルの幅は60cmと120cmの2種類を基本にしている。

長さ幅などを別にすれば、使われているコンポーネントの種類はたった13種類だけである。しかもデザインの自由度は保証されている。

内装という面では鉄鋼構造は、コンクリート構造と比べ、支えるといった機能以外になにも持っていない。あくまでも支持構造として役立っているだけで、完成後は見えなくなってしまう。

外側はレンガか他の面材で仕上げられ、内部は石膏ボードの内装システムで仕上げられるが、とかく鉄鋼構造で問題となっている遮音には配慮している。

また環境問題への配慮という面でも、鉄鋼はレンガやコンクリート構造よりも優れている。リサイクルも可能であるし、容易に再使用も可能である。

そしてさらに厳しい環境での現場作業のかなりに部分を工場作業に移すこともできるので、労働環境の改善という面からもメリットが大きい。

メカニカル・ジョイント

1:Bearing Elements

2:HAT Profile

3/4:Fin Plates

5:C-Joint Beam

6-13:Conection Elements


コンピュータ化の可能性


IBSはシステマティックでしかもモジュール化されているので、設計生産のコンピュータは容易である。

工場生産でのCAM、そして設計でのCADシステムの導入は、迅速でしかも効率的な運用を可能にする。

アイントホーヘン工業大学でこれまで開発してきたCADシステム上でIBSの設計システムは稼働しており、部品リストの作成や積算だけでなく、3次元でのプレゼンテーションも可能になっている。

費用対効果すなわちコストと結果を見ながら設計を進めることができる。CADとCAMの統合により、コンピュータによって統合された設計生産システムの構築可能である。

またIBSではBerker社ののEIB(European Installation Bus)が使われており、これもフレキシビリティーの拡大に貢献している。


Last modified: Sat May 4 09:40:00 JST 1996
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

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