European Installation Bus
シーメンスのインスタバス


住宅情報化のためのホームバスの考え方が登場したのは1970年代の後半からで、オランダのフィリップス社はいちはやくD2Bとして提案しAV機器のデジタルコントロールシステムの規格化作業を始めた。

しかしD2Bが国際機関で検討の対象として取り上げられたのは1986年からで、進歩の著しいAV機器が対象だけに、その時には時代遅れになってしまった。

1980年代に入るとヨーロッパだけでなく、アメリカ、日本でもホームバスの標準化作業が開始された。こうした標準化努力によって、わが国ではHBSとして1988年世界に先駆けてホームバスの規格が制定された。

ちょうどバブル景気に沸いた時代でもあり、ホームオートメーションは大きな市場になると期待された。しかしバルブ景気がはじけて以降、わが国ではホーム・オートメーションはだれも振り向きもしなくなった。


開発のスピードが遅くかなり出遅れたヨーロッパであったが、1990年代に入ってもホームバスの標準化作業は着実に進んでいる。

ヨーロッパのホームバスの規格は現在3つの陣営に分かれて進められている。シーメンスが主体のドイツ・グループのEIB(ヨーロッパ・インストレーション・バス)、トムソンが率いるフランス・グループのBatiBus、フィリップスが中核となっているオランダ・グループのEHS(ユーロホームシステム)に分かれている。

ECでは統一した規格のための作業がなされているが、とくにEIBとBatiBusは具体的なユーザーを多く抱えているだけに規格の統一はなかなか難しい。



ヨーロッパでホームバスシステムが具体的な市場を抱えられるのは、EHSを除いてバスシステムが対象を住宅に限っていないからである。

この点わが国は違っており、ビルディングオートメーション(BA)とホームオートメーション(HA)の業界は全く交流がない。



こうしたヨーロッパの標準化の会議で、日本のHBS(ホーム・バスシステム)は、おじいちゃんの規格、すなわち2世代前の規格として紹介されている。

10年も前の規格でしかも具体的な市場からのフィードバックがなされていない机上の規格だからである。


HBSはツイスト・ペア線と同軸ケーブルだけであるが、ヨーロッパではこれに加え電灯線搬送、赤外線、無線もバスラインとして利用されている。

赤外線ももちろん双方向である。Windows95以降パソコンでも赤外線通信が標準で付けられるようになっている。無線にしてもコードレスホン、PHSが家庭に入ってきている。PHSとホームオートメーションは実に相性がいいが、だれも取り組んでいない。

この二つはワイヤレスなのでフレキシビリティーが高いし、既存の住宅への導入も容易である。なぜわが国のHBSがツイスト・ペア線と同軸ケーブルだけ、しかもいつ機能するかわからない先行情報配線にこだわり続けているのか不思議である。これでは2世代前のホームバスと呼ばれても仕方がない。



またワイヤレスだけでなく、既存のシステムとの両立性といった努力でもヨーロッパは進んでいる。たとえばEIBの場合、暖房のラジエターのバルブの握りの部分をモータードライブに変えるだけでホームオートメーションと接続できる、そんなアダプターがごろごろしている。



しかもそれをシーメンスではなく、それぞれの専門器具メーカーが製造販売しているといった裾野の広さが、ホームオートメーション推進の大きな力になっている。



シーメンスの開発したEIB( European Installation Bus)は、すでにドイツだけでなくフランス、イギリス、イタリア、スペイン、スイスなど80社程がライセンスを取得している。

そのためレーゲンスブルグにあるシーメンスのEIBのトレーニングセンターでは4カ国語での講義が行われている。





ホームオートメーションはエネルギー・マネジメントや高齢者支援などのために、その必要性がますます高まっている。ヨーロッパから2世代も遅れてしまった日本が心配である。


Last modified: FRI January 9 16:31:00 JST 1998
(c) Dr.Shigeaki Iwashita

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